春は、花粉や紫外線による外的刺激や気候、生活環境の変化などで、肌のトラブルが増える時期。特に、皮脂分泌の増える春から夏にかけて、突然のニキビやすでにあったニキビの悪化など、ニキビに悩む方が多いといいます。
今回は、ニキビ治療のひとつとして皮膚科などの医療機関でも行われているピーリングについてお伝えします。ピーリングはニキビの改善に効果がある反面、肌への刺激も強いため、ニキビや肌の状態によってはかえって症状を悪化させてしまう場合があります。どのような状態であればピーリングでニキビの改善ができるのか、ピーリングをお考えの方は参考にしてみてください。
ピーリングがニキビ治療に効果的だといわれる理由
ニキビができるメカニズム
ニキビは「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」という皮膚疾患のひとつ。ニキビができる要因はストレスや生活習慣の乱れ、生活環境の変化、スキンケア、体質など様々ありますが、もっとも多くの原因は「毛穴に皮脂が詰まるため」です。
毛穴がつまる原因としては、
- 皮脂分泌が過剰になる
- ターンオーバーの乱れにより排出されるはずの古い角質が肌に残る
などが挙げられます。これらを効果的に解消できる方法として、皮膚科などでニキビ治療に用いられているのがピーリングです。
ピーリングとは
ピーリング(Peeling)は、「剥がす」「皮をむく」などの意味のとおり、人為的に肌の古い角質を取り除き、ターンオーバーを早め、新しい皮膚の生成を促す方法。ニキビができる原因となる毛穴のつまりを解消することでニキビ治療にも効果があるといわれています。そのほか肌質の改善、エイジングケア、美容面での効果が期待できる施術です。
ピーリングには主に以下の方法があります。
ケミカルピーリング | 酸性の薬剤を肌に塗布し、ピーリングします。乾燥肌、敏感肌の方には向きません。 |
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レーザーピーリング | レーザーを肌に照射し、光線によりピーリングします。どの肌質の方も施術できます。 |
クリスタルピーリング | アルミニウムの微粒子を肌に吹きつけてピーリングします。どの肌質の方も施術できます。 |
ダイヤモンドピーリング | 微粒子のダイヤモンドを金属のバーに蒸着させたものを肌にあて、カンナをかけるようにピーリングします。どの肌質の方も施術できます。 |
ケミカルピーリングでのニキビ治療
もっともポピュラーなピーリング「ケミカルピーリング」
前述のとおり、ピーリングにはいくつかの種類がありますが、一般的にニキビの治療として用いられるのはケミカルピーリングです。皮膚の表面にフルーツ酸などの酸性の薬剤を塗布し、古くなった角質や毛穴に詰まった角栓、汚れなどを溶かして除去することでターンオーバーを促し、肌の再生を助けます。
使用する薬剤は大きく分けて2種類です。
AHA(アルファヒドロキシ酸) | 主成分が天然由来のためフルーツ酸ともいわれています。低刺激で、石鹸やジェルなど市販のピーリング用品にも使用されている成分です。グリコール酸(砂糖やタマネギに含まれる成分)、リンゴ酸(リンゴに含まれる成分)、クエン酸(柑橘類に含まれる成分)乳酸(ミルクに含まれる成分)などの種類があります。 |
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BHA(ベータヒドロキシ酸) | ピーリング作用がかなり強く、主に医療機関で使われています。サリチル酸マクロゴール、サリチル酸エタノール、トリクロール酢酸(TCA)などの種類があります。 |
ニキビ治療に効果的なケミカルピーリングの具体的な作用
薬剤の種類や強さによっても異なりますが、ケミカルピーリングではニキビの予防と改善に以下の効果が期待できます。
- 皮膚の余分な角質を取り除き、毛穴を詰まりにくくする
- できてしまったニキビの毛穴の詰まりを解消し、ニキビの悪化を防ぐ
- 殺菌作用でニキビの炎症の原因を抑える
- ターンオーバーの促進、正常化により、色素沈着したニキビ跡を薄くする
ニキビ治療以外で期待できるケミカルピーリングの効果
ケミカルピーリングはニキビ治療の他にも肌の悩みを改善する効果が期待できます。
- シミ、そばかす、くすみ、毛穴の黒ずみ、色素沈着のクマ、小じわの改善
- 毛穴を引き締め、透明感、キメのある肌に導く
ケミカルピーリングの副作用
ケミカルピーリングは化学薬品で角質を強制的に剥がすため、肌に負担をかけるものでもあります。そのため、肌質や肌の状態がピーリングに適していなかったり、薬剤の量や使用時間を間違えてしまうと、以下のような症状が出るなど肌トラブルの原因にもなります。
- 肌の乾燥、ヒリヒリとした痛みやかゆみ
- 肌の赤みや腫れ
- ざらつきやごわつきなどの肌荒れ
- ニキビの発症、増加、悪化
ケミカルピーリングがニキビに有効な場合、避けた方がいい場合
ニキビ治療にケミカルピーリングが効果的とは言っても、前述のとおり、ピーリングをすることでかえってニキビを悪化させたり肌トラブルを招く可能性は否めません。そのため、ニキビの症状や肌状態を知り、ピーリングを安全に行えるか見極める必要があります。
ここではケミカルピーリングが効果的な場合とそうでない場合をみていきます。
ニキビの症状別に見るケミカルピーリング
【ピーリングが有効なニキビ】
白ニキビ | 皮脂が毛穴にたまった状態。たまった皮脂は徐々に硬くなっていき、固まりに。この皮脂の固まりを「コメド」と言います。 |
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黒ニキビ | コメドがつまり、毛穴は開いている状態。開いた毛穴から空気に触れることで、コメドの表面は酸化して黒くなっています。 |
【ピーリングは控えた方がいいニキビ】
赤ニキビ | コメドが溜まり、皮膚の常在菌であるアクネ菌が毛穴で繁殖し、毛穴とその周囲に炎症が起こっている状態。赤く腫れ、痛みをともなうことも。 |
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黄色ニキビ | 赤ニキビの炎症がひどくなり、毛穴の中に膿が溜まった状態。膿疱(のうほう)とも言います。 |
肌の状態別に見るケミカルピーリング
【ピーリングが効果的な肌】
- 皮脂の分泌が多い
- 洗顔やクレンジングが不十分で毛穴が詰まっている
- 加齢が原因でターンオーバーが遅くなり、角質が溜まりやすくなっている
- 体質的に角質が溜まりニキビができやすい
【ピーリングは控えた方がいい肌】
- 敏感肌、または肌が刺激を受けやすく敏感になっているとき
- 乾燥肌、または肌の乾燥がひどいとき
- 肌が何かしらの炎症を起こしているとき
ケミカルピーリングの施術とその後のケア
ケミカルピーリングをする方法
ケミカルピーリングをするには主に以下の3つがあります。
皮膚科などの医療機関 | ニキビの治療目的でケミカルピーリングを行える唯一の場所です。保険治療ではないため高額の費用がかかりますが、肌やニキビの状態、肌質などにより、医師がその都度使用する薬剤や濃度、塗布時間を決定するため、ニキビ治療に適切な処置を受けることができます。 |
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エステティックサロン | エステではニキビ治療を目的としたケミカルピーリングを行うことができないため、低濃度の薬剤による、美容目的でのケミカルピーリングが受けられます。ニキビ治療には薬剤の濃度が必要となるので、ニキビ治療をご希望の場合は医療機関での施術をおすすめします。 |
セルフケア | 薬局やドラッグストアなどにある市販のピーリング剤を使ってセルフケアをすることも可能です。医療機関ほどの効果は期待できませんが、皮脂の除去や角質ケア、ターンオーバーの促進・正常化は期待できます。また、ニキビ予防などに、普段のスキンケアでピーリング効果のある角質柔軟成分(ピーリング系成分)などが配合された化粧品を使う方法もあります。 |
※セルフピーリングの注意点
使用前には必ずパッチテストをして、薬剤の使用頻度は必ず守りましょう。また、拭き取りタイプやスクラブ、ゴマージュなどの肌をこするようなタイプのピーリング剤は肌に刺激を与えることがあります。肌への負担を考慮しながら使用しましょう。
施術後の注意点
ピーリング後の肌は無防備でデリケートな状態。バリア機能が低下しているため、外的刺激に対する抵抗力がとても弱く、ダメージを受けやすくなっています。ピーリング後は以下の点に注意しましょう。
- ピーリング後2、3日は一時的に肌が乾燥するため、普段以上に保湿をしっかり行いましょう。肌の乾燥が続くと、ピーリングでは治療が難しい乾燥によるニキビができてしまうことも。
- 肌に様々なダメージを与える紫外線は、ピーリング後の肌には厳禁。ピーリング直後は外出を控えるか、低刺激の日焼け止めを塗るなどしっかりと紫外線対策をして肌を保護しましょう。また、ピーリング前は日焼けによって肌を傷めないようにすることも大切です。
- 施術後は肌が敏感になって刺激を受けやすいため、ピーリング後3、4日はマッサージやサウナ、スパやエステ、プールなども控えましょう。
ピーリングができないニキビにはビタミンCでのケアがおすすめ
ニキビや肌の状態、肌質でピーリングができないという方には、ビタミンC配合の化粧品でのスキンケアがおすすめです。ビタミンCには皮脂の過剰分泌を抑えたり、ニキビを悪化させる活性酸素を除去する抗酸化作用やニキビの炎症を抑える抗炎症作用などがあります。また、ニキビ跡の原因となるメラニンの生成を抑制し、新陳代謝を活性してターンオーバーを促すため、ニキビ跡のケアにも効果的です。
もちろん、ピーリング後のスキンケアに取り入れるのも◎。ピーリング後は化粧品が肌に浸透しやすい状態なので、ビタミンCによるスキンケアでさらにニキビの改善が期待できます。
いかがでしたか? 市販の薬剤などもあり、どこか手軽にできるイメージもあるピーリングですが、ニキビの治療目的でピーリングを行うには肌のコンディションも大切になってきます。お悩みの場合は、まずは医療機関に相談し、セルフピーリングをする際は肌やニキビの状態を見極め、ピーリングで悪化しないことを確認してから行いましょう。
また、肌が不調のときはピーリングにこだわらず、ニキビに効果的なビタミンC配合の基礎化粧品でのスキンケアに変えてみるのもひとつの方法です。肌に負担をかけず、適切な方法でニキビのない肌を目指しましょう。